MACRO × MICRO

Official Documentation & Guide

▶️ クイックガイド動画

本シミュレーターの設計思想と、マクロ経済プラグインの基本的な適用方法を7分の動画にまとめました。まずは左画面でこの動画を再生しながら、右画面でシミュレーターのパラメータを操作し、ご自身の家計への影響を体感してください。

1. 開発コンセプト:「見る」から「重ねる」へ

私たちが日々目にする行政や公的機関の統計データ(物価上昇率、税制の変化、社会保険料の推移など)は、単なるニュースの中のグラフとして「見る」だけで終わることが大半です。しかし、社会の動き(マクロ)は、間違いなく私たち個人の生活(ミクロ)の時系列に強烈な影響を与えます。

これまでの一般的なライフプランツールは、社会環境の変化を固定値として簡易的に処理していました。「給料はずっと一定」「インフレは起きない」「税制は今のまま」という非現実的な前提で作られたシミュレーションは、数年で使い物にならなくなります。

本システム 『MACRO × MICRO : Life Oracle』 は、AI技術とオープンデータを活用し、複雑な公的データや経済シナリオを動的なパラメータとしてコード化(プラグイン化)しています。これにより、「もし消費税が15%になったら」「もし首都直下地震が起きて復興増税が始まったら」というマクロな世界線を、あなたのミクロな家計簿に直接「重ね合わせる」ことを可能にしました。

2. 基本的な使い方:あなたの「今(ミクロ)」を定義する

まずは画面左側のフォームに、ご自身の現在の状況を入力します。入力された「額面」の数字は、裏側で日本の複雑な税制や社会保険制度を通され、シビアな「手取り額」として計算されます。

① 世帯タイプと年齢・収入

  • 世帯タイプ: 「単身」「共働き」「片働き」から選択します。これに連動して配偶者の入力欄が自動で切り替わります。単身や片働きを選ぶと、将来の年金計算において「配偶者分の基礎年金や厚生年金」がどのように扱われるかが自動調整されます。
  • 年齢と収入: 現在の年齢と額面の年収を入力します。この年収をベースに、超過累進課税(所得税・住民税)や健康保険料・厚生年金保険料の上限(頭打ち)が計算され、リアルな可処分所得が算出されます。

② 住居形態(賃貸 or 持ち家)

  • 持ち家(購入): 物件価格と頭金、借入期間などを入力します。ここで「変動金利」を選択すると、将来インフレが発生したシナリオにおいて、連動して住宅ローン金利が上昇するリスクもシミュレートされます。また、物件価格に応じた年間維持修繕費(0.5%)も自動計上されます。
  • 賃貸: シンプルに月額家賃を入力します。インフレ率に連動して家賃負担も徐々に上昇していくロジックとなっています。

③ 子育て・教育ルートの設定

「子供を追加する」ボタンを押し、お子様の現在の年齢と想定する進路のチェックボックスをオンにします。

💡 隠されたコスト(中学受験のリアル)
単に中高の学費が変わるだけではありません。「私立中(+塾)」のフラグをオンにした場合、実際に私立中学に通う3年間だけでなく、小学校高学年(4〜6年生)の期間に「通塾・模試代」として年間120万円の追加コストが強制的に計上されます。中学受験がいかにキャッシュフローを破壊するか、グラフの「教育費」の波で確認してください。

🔄 3. 表示モードの重要な違い

実質(購買力) vs 名目(額面)

シミュレーション結果を正しく解釈する上で、最も重要なのがこの概念です。画面右上のボタンでいつでも切り替えが可能です。

  • 名目(額面)モード: 銀行口座の通帳に印字される数字そのものです。インフレが進めば、給与も資産も見た目上の金額はどんどん増えていきます。しかし、物の値段も上がっているため、生活の実態を正確に表していません。
  • 実質(購買力)モード(※推奨): インフレによる「お金の価値の目減り」を差し引いた、現在の価値基準でグラフを描画します。例えば、30年後に名目資産が1億円あっても、インフレ率が年2%続いていれば、現在の約5,500万円相当の購買力しかありません。本システムでは、将来の不安を現実的に評価するため、デフォルトで実質表示を採用しています。

決定論(基本) vs 確率論(モンテカルロ)

金融市場は常に変動(ボラティリティ)を伴います。本システムでは2つのアプローチで未来を検証します。

  • 決定論(Deterministic): 設定した期待リターン(例:年利4.0%)が、毎年寸分違わず確実に達成されると仮定したベースラインです。キャッシュフローの構造的欠陥や、教育費のピーク時期を視覚的に把握するのに適しています。
  • 確率論(Monte Carlo): 指定されたリスク(標準偏差、デフォルト12.0%)に基づき、正規分布を用いた乱数生成を数千回繰り返し、起こり得る未来の「ブレ幅」を算出します。暴落が連続して起きる最悪のタイミング(Sequence of Return Risk)を想定したストレステストを行うためのモードです。

4. シミュレーション結果(グラフ)の詳細な読み解き方

本システムでは、行政機関等が公表する統計データや現行の税制・社会保険制度をベースラインとして厳密に内包しています。各グラフが何を意味し、どのような裏付けで計算されているのかを解説します。

① 生涯資産推移(純資産 & 金融資産)

あなたの生涯にわたる資産の浮き沈みを示す、最重要のグラフです。

  • 金融資産(緑色の塗りつぶし): 現金や株式、投資信託など、流動性の高い資産の合計です。この数値がゼロを割り込んだ場合、家計がショート(一時的な借金状態、あるいは老後破産)していることを意味します。
  • 総純資産(青色の折れ線): 金融資産に加え、持ち家を選択した場合の「不動産の残存価値(経年劣化とインフレを加味)」から「住宅ローン残高」を差し引いた、真の資産価値を示します。
💡 モンテカルロモード時の見方(ファンチャート)
確率論モードに切り替えると、金融資産の推移が「上位10%(楽観)」「中央値(50%)」「下位10%(悲観)」「最悪ケース」の帯状のグラフに変化します。リタイア時の下位10%ラインがゼロを上回っていれば、極めて安全性の高いライフプランであると評価できます。

② 年間収入の推移(世帯合算・手取り)

世帯に入ってくる「実質的な手取り額」の推移です。

  • 本システムは超過累進課税制度(所得税率5%〜45%)および、厚生年金・健康保険の標準報酬月額の上限(年金780万円、健保1660万円の頭打ち)をコードレベルで正確に再現しています。
  • 額面年収が上がっても、税率の壁や社会保険料の増加、あるいはマクロシナリオによる増税(可処分所得減少率パラメータ `demoTaxPenalty` の発動)によって、手取りが予想以上に伸びない現象を可視化します。

③ 年間生活・教育・医療費の推移(世帯合算)

ライフステージに応じた支出の波を積み上げグラフで表示します。

  • 教育費: 文部科学省「子供の学習費調査」をベースに設定されています。
  • 医療・介護費: 厚生労働省「生涯医療費」の統計を加味し、年齢層別に自己負担額がベース設定されています。マクロシナリオで医療技術の高度化(`medProgressRatio`)が進むと、特に高齢期の負担額が非線形に急増する設計となっています。

④ 税・社会保険料の推移(世帯合算)

私たちが国や自治体に納めているコストの総額です。

  • 給与天引きされる直接税や社会保険料だけでなく、生活費や教育費に潜む「消費税等」も概算して積み上げています。消費税率が変動するマクロシナリオを適用した際、家計の支出全体にどれほどの重しになるかが一目で分かります。

⑤ 年金代替率 & 社会保険料 累計回収率

現行の年金数理モデルに基づき、社会保障制度に対する家計のROI(投資対効果)をシビアに算出します。

  • 年金所得代替率: 「現役時代の平均手取り」に対する「老後の年金手取り」の割合です。政府公約である「代替率50%」を維持できるか、少子高齢化によるマクロ経済スライド(年率-0.5%の下押し圧力)によってどこまで実質価値が目減りするかを確認します。
  • 累計回収率: 生涯で支払った社会保険料(労使折半の企業負担分を含む実質労働コスト)に対して、受給する年金総額が何%に達するかを示します。長生きすればするほど、また運用利回りが低調な世界線ほど、この数値の意味合いが変わってきます。

🤖 5. AI拡張とコミュニティへの放流

本システムの最大の特長は、LLM(大規模言語モデル)を活用した動的な世界線の書き換えです。

⚡ 生成AIシナリオ生成

「10年後に巨大地震が発生し、復興増税で手取りが5%減る」といった、テキストで記述したIFの物語を、AIが瞬時にステートレスなJavaScriptコード(プラグイン)に変換し、シミュレーターのパラメータに反映させます。

💀 AI家計診断(襲撃モード)

現在の入力データをAIが分析し、あなたの家計の「一番の弱点(アキレス腱)」を見つけ出します。例えば、教育費が最大化するタイミングを見計らってスタグフレーションを直撃させるなど、意地悪で致命的な専用シナリオを自動生成し、耐久テストを強要します。

🌐 タイムラインへの放流とインポート

AIと協働して生み出した独自の絶望シナリオ、あるいは希望のシナリオは、Cloudflare D1データベースを通じてコミュニティのタイムラインに「放流(共有)」できます。
また、タイムラインに並ぶ他人のシナリオを「📥 試す」ことで、他人が想定した過酷な世界線の中で、自分の家計が生き残れるかを瞬時に検証できます。人気順(利用回数)ソートを活用し、多くの人が恐れているシナリオへの耐性を確認しておきましょう。